2026年 長野県地理学会 北信地区大会実施報告

2026年 長野県地理学会 北信地区大会実施報告

テーマ「須坂と小布施の地域おこし」

〜明治・大正・昭和レトロが残る町「須坂」~                                                                                                 

〜「栗と北斎と花のまち」小布施〜

〜北信濃における観光の現状と課題〜 

会 場 須坂市・小布施町                

2026年8月6日(木) 

会場:須坂市旧上高井郡役所

理事会 / 総会 (2025年度事業報告・決算、2026年度事業計画・予算 等)

特別講演1

「カタカタ」の音が音楽になった!〜製糸の町須坂と晋平・雨情の出会い〜

前須坂市教育長                  小林雅彦氏

中山晋平作曲、野口雨情作詞の須坂小唄がいかなる経過の中で作られ定着したのか。製糸業の盛んな時代を背景に、一地方小唄が全国に広がり、須坂市民の自信と誇り、そして街並み保存に繋がってきたことを、晋平、雨情の出会い、画期的なプロモーション、当時の情勢のエピソードを多分に含めたわかりやすい解説をしていただいた。

特別講演2

「ようこそ須坂市へ」            須坂市教育長 勝山幸則氏

須坂市の魅力を伝えるプロモーションビデオを視聴の後、長野県9地区の内の1つであり製糸街としての指定は全国唯一の須坂市の重要伝統的建造物保存地区についてのお話を伺った。

研究発表 「須坂のレトロ」 市川正夫氏

≪小巡検≫ 須坂街巡り

①郡役所→②長屋街→③奥田神社→④寿泉院→⑤青木新道→⑥勝善寺→

⑦旧信陽銀行→⑧浮世小路→⑨旧小田切家住宅

重要伝統的建造物保存地区、旧館跡の奥田神社、製糸業で栄えた頃を忍ばせる名残を各地で見学。旧小田切家住宅では再建とは豪奢な屋敷、裏川用水がもたらしたものを見学。

8月7日(金)

会場:小布施町公民館講堂

研究発表                 「栗と北斎と花のまち」小布施町とは”           市川正夫氏

≪小巡検≫ 小布施街巡り

①皇大神社→②かんてんぱぱ→③桜井甘精堂→④松葉屋→⑤栗の小道→

⑥幟の広場→⑦栗の小道→⑧小布施堂

修景によって生み出され築かれてきた街並み、小径、オーブンガーデンを見学

講 演

「長野県北部における山岳ツーリズム持続可能性−ヨーロッパアルプスと比較して−」

筑波大学生命環境系教授(地球環境科学領域) 呉羽正昭氏

オーストリアチロル州の山岳ツーリズムの状況について、宿泊のパターン、アクティビティの移り変わりを含めて解説いただいた。日本の観光地と比較を通して、これからの山岳中心の魅力としたツーリズムの展開について、対象の独自性を構築すること、文化としての視点の発信、課題としての人材育成などについて今後の山岳ツーリズム持続可能性について示唆を得た。

シンポジウム「長野県町村における観光の現状と課題」

シンポジウム 「長野県町村における観光の現状と課題」

司会:市川正夫氏

パネリスト:     筑波大学教授 呉羽正昭氏

                                野沢温泉村長 上野雄大氏

                                山ノ内町長  平澤岳氏

                                小布施町長  大宮透氏

地理学会員のみならず、地域住民を含め70名ほどの参加があり、3人の首長に地元の現状と課題、街の良さと街づくりへの熱い想いを語っていただいた。観光は生業であるが一般住民には関係の無い部分もあり、住民にとって住みやすいところであることも心地よい街づくりのポイントであることが指摘された。

人材育成は3町村だけではない課題であり、若い世代の動向、観光客の集中時期の人材、女性の活躍の場、移住者も含め人材の引き込み、大学観光学部での人材育成について意見交換がなされた。

フロアからの質問を受け、町村を越えた広域での連携強化、協力体制の構築と情報発信、交通インフラ整備も話題となった。

最後に4人のパネリストが並んで山岳を両手で表しての記念撮影は本シンポジウムを象徴するものとなった。

     

総 括

今大会は、北信地方の須坂・小布施を舞台に実施した。地元出身で、地元に精通している市川会長のお力によるものが大きかった。
 須坂では、お二人の特別講演と小巡検を通して、明治から昭和の時代にかけて「製糸の町」として栄えた姿とその現状を知ることができた。旧上高井郡役所を会場としたことも貴重であった。
 小布施では、コンパクトにまとまる歴史的街並みを全て徒歩で回り、当時および修景された現状、観光地の状況を実感することができた。暑い時期ではあったが、室内や日陰が多く、歩きやすかった。午後の講演会では、世界(オーストリアチロル州)との比較から長野県北部の山岳ツーリズムを考え、シンポジウムでは地域間(小布施、山ノ内町、野沢温泉村)の違い、個性を認識することができ、今後の地域の観光を考える機会となった。3町村長によるシンポジウムは初めてであり、地域の参加者がこれほどあった大会は初めてであった。一般参加者にとっても意義ある内容であった。
 大学生4名の参加があり、大学の講義では得られない学びを得たと話していた。会の高齢化・存続は長年の課題であり、総会でも話題としたが、今後の当会、地理学を担っていく若者の入会を含めて検討していきたい。