日本活断層学会の2024年秋季学術大会が「令和6年能登半島地震から考える大地の動き」と題して行われた。日時は11月2~3日で実施され、個人的には3日13:30~17:00のシンポジウムに参加した。会場は長野市の信州大学教育学部で同学部に所属している活断層のプロパ-である廣内大助先生と学部生を中心に運営が行われた。会場には学会員だけでなく一般の方も参加していた。
以下にはシンポジウムの内容について列挙する。
- 人工衛星から視る令和6年能登半島地震の地殻変動と断層運動
小林知勝 国土地理院
近年地殻変動の測定は合成開口レ-ダ-(SAR )が利用されはじめた。今年の能登半島地震においてこれが利用されて成果をあげている。
- 令和6年能登半島地震震源域周辺の地殻構造と断層構造
石山達也 東京大学
日本海東部地殻構造と中新生以降の構造発展に基づき、能登半島地震に際し活動した海底活断層を含む能登半島・富山トラフの能登半島周辺地域に分布する断層および地殻構造を検討した。
北海道から東北・中部地方の日本海岩にはM7クラスの地震のリスクがある。
- 令和6年能登半島地震における岩体の崩壊ならびに海底の隆起にともなう地形変化
塚脇 真二 金沢大学
令和6年の能登半島地震により岩体崩壊や海底の隆起による地形変化について、地震前と地形・地質の変化について紹介した。最近の豪雨で災害が倍化した。
- 能登半島地震における海岸の隆起と低位段丘の分布との関係
宍倉 正展 産業技術総合研究所
隆起生物遺骸群である生物の遺骸を調査することで過去の地震の様子が判明できる。令和6年の能登半島地震とⅯ7.5を超える同じような地震が過去6000年の間に少なくても3回は発生している可能性がある。その様な地震が平均して1000年から数千年の間隔で発生していると思われる。
- 令和6年能登半島地震に伴う海岸隆起と海底変状
立石 良 富山大学
令和6年度の能登半島地震は半島北東部で海岸隆起が発生した。この地震による地殻変動や地形変化を明らかにすることを目的として、半島北部全域に分布する紅藻ビリヒバという生物遺骸の分布高度を基準にして隆起量調査を行った。その結果、海岸隆起の最大が5.5mということが判明した。
- 能登半島北部谷底平野に現れた背斜状の地表変状
白濱吉起 東京大学
令和6年の能登半島地震により、北部では海岸線の後退、内陸部では液状化や地滑り・斜面崩壊、珠洲市若山町では谷底平野に背斜状の地形変化が見られた。それらの地表変状の分布やそれらの特徴を明確化した。
- 令和6年能登半島地震における富山沿岸部での津波と住民避難の調査報告
呉 修一 富山県立大学
令和6年の能登半島地震による津波に関して、富山県沿岸で浸水・遡上状況に関する調査報告および避難状況に関するアンケート調査報告であった。課題としては津波と冬季風浪の重複、車避難への対応、海底地すべりをどう考えるか、大規模連動を考慮した津波などであった。
以上である。発表内容は元旦に発生して能登半島沖地震についてであり、タイムリ-で最新の分析がされて個人的には勉強になった。ただ今回の活断層地震について、今だに解明されていない部分や避難・対策などなど課題が山積していることが感じられた。これに対して日本政府や石川県、関係市町村の対応や分析等がこれからかと思うが、これらの教訓がどのように生かしていくかなど早急な対応が必要であると考える。
文責 市川正夫