長野県地理学会例会の報告

長野県地理学会例会の報告

長野県地理学会例会が雪の中、長野市の信州大学教育学部で実施されました。

役員会にて2025年の夏季大会について説明がありました。

日時は2025年8月7・8日。小県郡青木村を中心に実施されます。

7日の研究発表は東御市のワイン特区と青木村の義民太鼓について。特別講師として「青木村の地域おこし」と題して北村まさお村長から講演があります。次に小巡検として五島慶太未来創造館、竹内製作所青木工場、五島慶太の生家の見学をします。宿泊地は田沢温泉和泉屋旅館です。

8日は巡検になります。最初に東御市ワイン特区となっているワイン用ブドウ園、ワイナリ-を午前中、午後にはニプロ松山株式会社に伺います。

大会全体を通して上小地区の偉人・六次産業・近代工業等について学習いたします。特別な展示も見ることができ楽しみです。多くの方の参加をお待ちしております。

 そのほかの議題として、以下3点が話し合われました。

  • 議題規約は検討中であること。
  • 昨年から始まった学会ホームページの報告があり、随時内容の更新、充実が課題となっていること。
  • 会費未納について。   

研究発表

1 本会顧問の佐々木清司先生から「長野県ワインブドウ栽培」と題して発表していただきました。

長野県14カ所がワイン用ブドウの特区になり、令和元年からワイン用ブドウ栽培が全国一位となっています。それは気候条件が寡雨地域、日照時間が長いことであるとしています。さらに「信州ワインバレー構想推進協議会」を結成して、なかでも長野県の行政である県・市町村などの支援が大きかったことが挙げられます。

現在長野県内のワイナリーは83場が存在し、さらに増加傾向にありますが、全国500場のうち6分1にあたります。そのうち東信は31場でヨ-ロッパ系のブドウを栽培して独自性をだしています。

 

2 伊那市立東春近小学校の奥山加蘭さんから「平成18年7月豪雨における岡谷市湊地区の住民の避難トリガーと過去の災害との関連」と題しての発表していただきました。

防災について過去の災害について役に立つと思われなかでも伝承碑が参考になります。諏訪・岡谷地区には伝承碑が29あります。近年起きた大災害で平成18年のものです。水害の問題点は避難関係で、過去の論文では2021年の阪本の避難トリガーが論じられています。そこで過去の水害における避難行動について調査を行いました。なかでも住民のヒアリングを行い、問題点は過去の災害から教訓は少なかったが伝承にはメリットがあることを指摘しています。災害デジタルアーカイブの重要性があり参考にしてほしいとしています。

3 伊那北高校教諭の丸山陽央先生が「フィールドから学ぶ~長野県伊那北高校カンボジアを通して~」として発表していただきました。

カンボジアに2025年1月8~13日に1・2年生20名とシェムリアップに訪問しました。1月は乾季、気温は30℃前後の気候でした。最初に一般の高床式住宅を訪問して、一階は炊事場、二階は寝室や仏壇がありました。NPO法人サラススと、ものづくりや女性の働く場の提供、子どもたちへの学習支援を見学しました。さらに小学校や高校、孤児院、アンコールワットなどを訪問しました。生徒の感想では「人生観が変わった」や「進路選択に有効であった」などの感想がありました。

 

最後に信州大学教育学部学生が3名になります。

4 「温泉資源の管理・利用の実態-長野県下高井郡野沢温泉村を事例に-」と題して若林耕一朗さんから発表されました。

天然資源の管理・利用が地域人によって行われているものが温泉共同浴場です。野沢温泉は地域の人が管理・利用していますが、他の人にも利用が可能となっています。つまりコモンズであり排他性やフリライダ-について研究をしました。野沢温泉の豊郷地区を調査としてインタビューやアンケート調査を行いました。次に温泉を管理している野澤組、湯仲間などを調査しました。管理の排他性は高く、利用の排他性は低い。観光は温泉資源の管理に価値があると考えます。

5 「魚沼丘陵北部地域における後期更新世以降の地形発展」と題して小林雅広さんから発表されました。

地下深部の活動断層に目を向けることが必要であると考えました。河成段丘の段丘面の分布や形成年代、分布高度を明らかにしました。既存の論文から、地形発達について考察をしました。

6 「多学年で実施する水害教育カリキュラムの提案-長野市立清野小学校での実践を例に-」は倉石椋さんから発表されました。

災害の多い日本では社会の防災・減災力が必要になっています。清野小学校の4~6年生の総合の学習で防災学習を実践いたしました。児童にアンケート調査を授業前と後でどう変化したのかを分析しました。結果的に水害カリキュラムの事例を提案しました。